〜第三話〜
・ポケモントレーナーに大切なこと・
保育園児からお金を巻き上げるほど私は落ちぶれちゃいない。
園児「よーし、勝負しろ!」
ただ、勝負を挑まれたとあれば話は別。
サナ「さああなたたち、やっておしまい!」
さてと。先に進むとしますかぁってあれ?分かれ道……。う〜ん、じゃまっすぐ行ってみよう。
???「サナ、ストップ!」
サナ「お?」
私を呼び止めた声の主はチェレンだった。ここであったが百年目!
チェレン「トライバッジを持つもの同士、どちらが強いか確かめさせてもらうよ!」
サナ「ほっほー、今の私に勝負を挑むか。いいでしょうとも、かかってきなさい!」
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チェレン「なるほど、そういう戦い方ね。」
サナ「負けたってのに冷静ねアンタ。」
まったく、マコモさんの件で懲らしめてやろうと思ったのに、効いてないじゃん。
サナ「あっ。それよりもアンタ、ベルに――。」
???「どけどけーッ!」
サナ「は?」
大声に振り向くと、プラズマ団2人が全速力で突進してきた。
サナ「うわぁ!……っててて。危ないじゃない!」
って、もうあんな遠くに。
チェレン「なんだよ、今の。」
サナ「あ、ベルだ。」
チェレン「なんで走ってるんだ?」
プラズマ団のやって来た方向から、今度はベルが小さな女の子と一緒に走ってきた。
ベル「はぁ……、ねえ、今の連中、どっちに向かった?」
チェレン「あっちだけど。で、どうして走ってるのさ?」
ベル「ああもう!なんて速い逃げ足なの!!」
女の子「お姉ちゃん、……あたしのポケモン?」
ベル「大丈夫!大丈夫だから泣かないで?」
チェレン「あのねベル。だからどうして走ってたんだ?」
サナ「ああもう!アンタ文脈読みなさいよ!!この子のポケモンがさっきの奴らに盗られたのよ!」
チェレン「そうなのか?」
ベル「そうなの!」
チェレン「それを早く言いなよ!サナ、僕たちでポケモンを取り戻すよ。ベルはその子と一緒にいて!いいね?」
ベル「うん!」
サナ「ちょっと、なに仕切って……っていうか、置いて行くなぁ!」
ベルと女の子をその場に残してチェレンを追う。追いついた先には小高い山があり、そのふもと、洞窟の入口のような場所にチェレンが立っていた。
サナ「奴ら、この中?」
チェレン「ああ。ところで、ポケモンの体力とかは大丈夫だよね?」
サナ「ま、アンタと戦いっぱなしだけどね、問題ないよ。」
チェレン「言ってくれるね。じゃ、行くよ。」
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チェレン「サナ。こいつら話が通じないメンドーな連中だね。」
サナ「だから最初っからそう言ったじゃん。交渉してもムダ、融通の効かない奴らだって。よし、ダンゴロゲットぉ!」
にもかかわらず、まずは外交的に話を付けるとかで説得を始めたけど……。
因みにその話し合いが不毛なものだと分かっていた私は、その間にポケモンゲットにいそしんでいた。
サナ「で、どうすんの?過激な交渉をするなら手を貸すけど。」
したっぱ「あんな子供にポケモンを扱えるはずがない。だから我々はあの子供からポケモンを救ったのだ。」
したっぱ「お前たちも同じだ。だから我々にポケモンを差し出せ!」
サナ「やなこった!」
したっぱ「何故だ!何故正しき我らが負ける!?」
サナ「そりゃ正しくないからでしょ。」
チェレン「さぁ、あの女の子から奪ったポケモンを返すんだ。」
新手のしたっぱ「返す必要はないぜ!!」
チェレン「まだいたのか。まぁいい。メンドーだからまとめて相手するよ。サナ、幼なじみのコンビネーションで彼らに思い知らせよう。」
サナ「おっけー、のった!」
したっぱ「まさか負けただと!?」
したっぱ「我々はポケモンを人間から解放するのだ。それをこんなヤツらにッ。」
チェレン「どんな理由があろうと、それで人のポケモンを奪っていいわけないだろ。」
したっぱ「お前たちのようなトレーナーがポケモンを苦しめるのだ。」
チェレン「まったく理解できないね。」
したっぱ「ポケモンは返す。だが考えろ。このポケモンは人に使われ可哀想だとは思わないのか。いつか自分たちの愚かさに気付くんだ。」
そう言って、4人のプラズマ団は去って行った。
チェレン「人とポケモンが一緒にいて、お互いの強さを引き出す。それがどうして可哀想なんだ。」
サナ「うん……さぁね。」
チェレン「さてと。僕はポケモンを返してくるよ。サナ、次会うときは負けないからね。」
サナ「こっちだって負けるもんか!」
洞窟を出ていくチェレンの背中に叫ぶ。
サナ「………。」
ひとりになり、プラズマ団について考えた。トレーナーに苦しめられているという理由でポケモンを解放すると言っているけど、自分たちもポケモンを遣い、あげく傷つけている。ポケモントレーナーと奴らとの間に違いがあるとすればそこだ。私たちは、ポケモンバトルはしても自分から傷つけようとすることはない。でも、結果は同じ……なんだろうか。
サナ「ポケモンの自由……か。」
それにしてもプラズマ団。野生のポケモンだけでなくトレーナーの、しかもあんな子供のポケモンまで狙うなんて……。
サナ「思っていたよりもタチの悪い奴らね。」
やれやれと3番道路に戻ると、さっきの場所にベルと女の子が待っていた。
ベル「あっ!サナ、ふたりでポケモンを取り返してくれたんだよね。ありがとう。ほんと、サナたちと友だちでよかった!!」
女の子「お姉ちゃん、ありがとう!!あのね、これお礼!」
サナ「おぉ?」
手に握らされたのは、ピンク色のモンスターボール。見たことのないデザインをしている。
ベル「あ、ヒールボールだね、それ。」
サナ「ヒールボール?」
ベル「それでつかまえたポケモンは体力満タンになるんだよ。」
サナ「へえ、そりゃ便利!ありがとね。」
あれ?でもそれって手持ちに空きがないと無意味ってこと?
ベル「じゃ、あたしこの子を送っていくから。じゃあね、サナ。」
女の子「バイバーイ。」
サナ「うん、バイバイ。」
さっきの洞窟は行き止まりだったため、3番道路の分かれ道を南に折れる。トレーナー何人かとのバトルを経て、シッポウシティに辿り着いた。
サナ「ふい〜っ!つかれた。」
タウンマップによると、ここにもジムがあるんだよね。どうしよかな。
サナ「う〜ん。でもその前にやっぱり今日はつかれたし、休もう。」
というわけで、今日はポケモンセンターで泊まることにした。
その夜。
私は手持ちのポケモンたちを全員ボールから出して考えていた。
ミズノ以外は、野生でいたのをつかまえたポケモン。この子たちは、元いた場所での自由にのびのびとした生活と、小さなボールの中での今の生活。どちらが幸せなんだろう。ミズノだって、親がいただろうし。
別に、プラズマ団の奴らが言ったことを気にしているわけじゃない。奴らのやり方は間違ってるし気にくわない。だけど、ポケモンの幸せってなんだろう?
サナ「いや。やっぱり気にしてるのかな。」
ポケモンの人間からの解放。人間といることで苦しんでいるポケモンを、自由に?
サナ「ねえ、あんたたちはどう思ってるの?私と一緒にいて、幸せ?」
でも、首をかしげて答えてはくれない。そりゃそうか。
サナ「あんたたちと喋れたらいいのにね。」
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???「サナ、サナ。」
サナ「だれ……?」
???「ぼくたちは、サナだから一緒にいるんだよ。」
???「そうそう。イヤだったら初めっからボールに入らないし。」
???「だから気にしないで。」
サナ「え、ちょっと……!」
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サナ「待って!」
あ?
サナ「ん……。」
どうやらいつの間にか眠ってしまっていて、夢を見ていたらしい。うたた寝だった割にはあまり体が冷えていない理由は、すぐに分かった。ゆうべボールから出したままだったポケモンたちが、私のまわりに集まってくれていたのだ。
サナ「もうっ、みんなかわいい寝顔だなぁ!」
どうやら考えすぎだったみたいだ。この子たちは、私と一緒にいることをすでに自分から選んでくれていた。何も気にすることなんてなかったんだ。
ミズノ「ミぃ……?」
私が起きたのに気付いたのか、みんなが目を覚ました。
サナ「さぁみんな、2つめのバッジに向けて今日は特訓だかんね!がんばるよ!」
私の意気込みが伝わったのか、みんなが元気よく飛びはね返事をした。
もう考え込むのはやめよう。この子たちを心配させたくないから。何よりも、私はこの子たちを信じてるから!
〜予告〜
"ためしいわ"での特訓。
無数の野生のドッコラーを倒しレベルアップを重ねていくゴロロロ(ダンゴロ)。
進化の時期が訪れるミズノ(ミジュマル)、ペローテ(ヨーテリー)、チョコロネ(チョロネコ)。
満を持して挑むシッポウジムリーダー・アロエ。
そして、みたび現れたプラズマ団。彼らが望む未来とは、果たして何を意味するのか。
次回、「博物館の戦い!ジムリーダー・アロエ!!」
乞うご期待
補足