2009年03月25日

たまにはこういうのもかかなければとおもった

「世界が終わりに近付いています。」
ある日、そんな第一声を放った生徒が来た。
「へえ、それは、大変そうね。」
私は保健医であってカウンセラーではないので あっ気に取られながらそんな回答しか出来なかった。
「ええ。でも、実はそんなに大変でもないんですよ。」
それでも会話は成り立ったようで、彼は話を続ける。
「気付いていないだけなんです。実は、いまこの瞬間もいくつもの世界が滅び、そして生まれ、あるいは再編されていることに。でもそれも大したことはないんです。なぜなら、それは予定調和に組み込まれた必然の現象ですから。」
「どういうこと?」
彼の説明をよく理解できなかった私は聞き返す。でも彼は話を続ける。
「しかし、世界の変化は自発的なものであって他発的なものではないんですよ、先生。外部からの影響によって変えられると、世界は自身の急激な変化について行けず自壊を選択するんです。」
彼は、話を続ける。
「だけど、世界がひとつでもイレギュラーな消滅をすると、干渉されるその他複数の世界も同時に消滅し、それが連鎖し、そしてすべての世界は、無に還ります。そうなればもう手の施しようがありません。」
話の内容は大方理解できなかったけど、事は重大そうだったので
「でも、さっき大したことはないって。」
と問いかけた。
「そこなんです。」
彼は話を再開した。
「世界には創造主がいるんです。たまに、"世界は無から生まれた"ということが言われますが、厳密にはあれは間違いです。"無"というのは内包物がなにも無いから"無"たりえるのであって、そこからは何も生まれません。正しくは、"無"という概念に情報を与え、"有"にしたところから世界が生まれるのです。そしてその情報を与えたものこそが創造主。まあ神様みたいなものですね。創造主は必ず、世界に自分の分身を置きます。それは守護者と呼ばれるもので、世界が再編される時などには必ず姿を現しその指揮を執ります。しかし今回のように外発的影響下では守護者は現れません。正確にはそれができないんですが、その説明は今は省きます。ではどうすればいまのこの危機的状況を打破できるか。そこで登場するのが救世主です。」
「きゅう、せいしゅ?」
「世界を救う者です。これは世界の意思で選ばれるものなんですが、」
彼はここで一旦言葉を区切り、改めて私の目を見てこう言った。
「シリアル・R998351684762、コード・セキュリクタトス、世界の代行者として参りました。あなたを、我が主の救世主として迎え入れるべく。」
posted by 秋雲 at 01:19| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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