2010年10月27日

七賢人現る

〜第六話〜
・ヤグルマの森の追走・


アーティ「ボクはこっちの舗装された方から行って出口を押さえている。」

サナ「きみはこっちの茂みの道を進んで連中を探してくれ。って……あァ!あったまくる!!自分は楽したいだけじゃないっ!」

アーティ「一本道だから迷うことはないよ。きっと。」

サナ「だいたい、きっとってなに、きっとって!そもそもこの茂みじゃ迷ってるのか迷ってないのか分からないし!」
これでプラズマ団がいなかったら承知しないから、あのヘンな髪型!
したっぱ「やや!きさまこんな所まで追ってくるとは、なんてしつこいヤツ!」
サナ「あら、いた。」
したっぱ「ええい、こうなったら打ちのめすまで!」


したっぱ「打ちのめされた!」
サナ「さてと。アンタたちはこの森の中に逃げ込んで、追っ手を撒いてから完全にトンズラする魂胆だったのかしら?」
したっぱ「う……、まぁそんなところだ。」
サナ「じゃあ、化石を持った奴もまだ森の中にいるのね。」
したっぱ「ふんっ、それはどうかな。」
サナ「あらあら。いまの私は虫の居所が悪いんだけど、他に何か言いたいことある?」
したっぱ「ひぃっ!……、しか、しかし、本当だ。自分は万一の時間稼ぎの為にここにいるのだからな!今ごろは……。」
サナ「今ごろはヘンな恰好のお兄さんが森の出口を塞いでるから、アンタたち逃げられないわよ。ところでアンタ。」
したっぱ「は、はひぃっ!?」
サナ「この森の地図を持っていたらよこしなさい。」





したっぱ「分かった!分かった。ホネは返す!」
森の奥にいたしたっぱを倒すと、観念したようにそう言った。どうやらコイツが化石を持っているようだ。
したっぱは隠していた化石を取り出し、私の前に差し出した。
Drabone.jpg
サナ「それにしても、こんな大きなものよく一人で……重っ!」
なにこれ。ホントによく一人で持ってたなってくらい重たい。……早くバ、バッグに……。
サナ「って入るかっ!」
したっぱ「ああ。これで我らの、そして王様の望みは叶わなくなるのか……?」
サナ「おうさま?」
???「大丈夫ですか?」
背後から、仰々しい衣裳に身を包んだ男がやって来た。
新手?ヤバ、両手使えないんじゃポケモンが……。
しかしそんな私の心配をよそに横を通り過ぎ、したっぱのもとに歩み寄る。
したっぱ「七賢人アスラ様!」
アスラ「王様に忠誠を誓った仲間よ。」
したっぱ「無念です、せっかく手に入れたホネをみすみす奪われるとは。」
アスラ「いいのです。ドラゴンのホネ、今回は諦めましょう。調査の結果、我々プラズマ団が探し求めている伝説のポケモンとは無関係でしたから。」
それまで私を無視して話をしていた二人が、私の方へ向き直った。さっきのしたっぱも水を得た魚のように得意気な顔をしている。
アスラ「さて。どなたか存じませんが、我々への妨害は見逃せません。」
う〜ん、マズい。
アスラ「二度と邪魔できないよう、痛い目にあってもらいましょう。」
さすがにお手上げかもね。手、上げられないけど。
あぁもう!この際あのヘンな芸術家でもいいから誰か助けて!
アーティ「ああ、よかった!」
サナ「はっ!」
心の声が届いたのか、私の隣にはそのヘンな芸術家がいた。
アーティ「虫ポケモンが騒ぐから来てみたら、なんだか偉そうなひといるね。」
サナ「あの、グッドタイミングで来ていただいてアレなんですけど、出口はいいんですか?」
アーティ「問題ないよ。みんな戦闘不能さ。ところでこのお偉いさんはさっきボクが倒しちゃったその仲間を助けに来たのかな?」
アロエ「サナ!アーティ!」
サナ「アロエさーん!」
アロエ「無事だったね。」
サナ「はい、化石もバッチリです!」
アロエ「ありがとうよ。……で、なんだい。こいつが親玉かい?」
Asura.jpg
アスラ「わたしはプラズマ団七賢人のひとりです。同じ七賢人のゲーチスは言葉を使いポケモンを解き放たせる!残りの七賢人は仲間に命令して実力でポケモンを奪い取らせる!……だがこれは、ちと分が悪いですな。虫ポケモン使いのアーティにノーマルポケモンの使い手アロエ。敵を知り己を知れば百戦して危うからず……。ここは素直に退きましょう。ですが我々はポケモンを解放する為トレーナーからポケモンを奪う!ジムリーダーといえどこれ以上の妨害は許しませんよ。いずれ決着をつけるでしょう。では、その時をお楽しみに……。」





サナ「話が長い!」
う、腕が……。
アロエ「それにしても本当に素早い連中だね。どうする、追いかけるかい?」
アーティ「いやあ……。盗まれたホネは取り返したしあんまり追い詰めると、何をしでかすか分かんないです。それに、彼女はそろそろ限界のようだ。」
サナ「あ……はぅ。」
アロエ「サナ!大丈夫かい?」
サナ「だいじょばないです……。」
アーティ「じゃあ姐さん。ボク戻りますから。それじゃあきみも。ヒウンシティのポケモンジムで挑戦を待っているよ。うん。たのしみたのしみ。」
って、あのひとジムリーダーだったの!?どうりで、プラズマ団がビビって逃げ出したのはそういうことか。
アロエ「サナ!本当にありがとうよ。」
サナ「ど、どうぞ……。」
ひょいっと、私の手から軽々と化石を受け取った。しかも片手で。
アロエ「アンタのように優しいトレーナーなら一緒にいるポケモンも幸せだよ。」
サナ「アロエさん……。」
アロエ「それとこいつはあたしの気持ちさ。大切に使っておくれ!」
アロエさんから渡されたのはゴツゴツとした石だった。
サナ「これは?」
アロエ「"月の石"といってね、それを使って進化するポケモンもいるんだよ。」
サナ「へぇ。ありがとうございます。」
アロエ「さて、ドラゴンのホネを博物館に戻さないとね。サナはこの後ヒウンシティかい?」
サナ「いえ、もう少しこの森を散策してみようかと思います。」
アロエ「そうかい。じゃあ、気をつけるんだよ!」
サナ「はいっ、またどこかで。」
そうしてアロエさんと別れた。それにしても、ホント軽そうに持つなぁ。けっこう重たいハズなんだけどなぁ、あの化石……。
サナ「まぁいいっか。さてぇ、それじゃあ道も覚えたし、もう一度森の中を廻ってみるかな。」


化石の奪還には成功した。だけど、プラズマ団の中の七賢人という存在は一筋縄ではいかなさそうだった。そのためには、私はもっともっと強くならなきゃ。私のポケモンたちと一緒に!



次回、サナ怒る。



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