〜第八話〜
・ベルの決意・
したっぱ「マズイ。マズイマズイマズイマズイマズイマズイ!ここで負けるのはプラズマ団としてマズイ。略してプラズマズイ!」
サナ「語呂が悪いし笑えない。くだらないこと言ってないでそこを退きなさい。」
ビルに踏み込もうとしたところで中から現れたしたっぱたちを一蹴し、啖呵を切る。
サナ「さあ!そこを退くの、退かないの!」
したっぱ「と、とにかく七賢人様にご報告だ!」
したっぱ「ああ!」
アイリス「わたしたちも行こう!」
サナ「ベル、行くよ。」
ベル「うん!」
ビルに入ると、フロアにはには何人ものプラズマ団のしたっぱと、森で出会った七賢人のような格好をしている大人が3人いた。その内の1人は、いつかカラクサタウンで演説をしていた奴だ。確か名前はゲーチス。
ゲーチス「これはこれはジムリーダーまでもお揃いで。」
サナ「アンタがプラズマ団のリーダー?」
ゲーチス「リーダー、というのは少し違いますな。」
スムラ「ポケモンジムの目の前に隠れ家を用意するのも面白いと思いましたが、意外に早くバレましたな。」
ゲーチス「確かに。まあワタクシたちの素晴らしきアジトは既にありますからね。……さてアナタ方。イッシュ地方建国の伝説はご存知ですか?」
サナ「は?いきなり何を。そんなことよりも、ベルから奪ったムンナを返しなさい!」
ゲーチス「威勢のいいお嬢さんだ。心配しなくとも、話が済んだらお返ししますよ。」
サナ「なんですって?」
ゲーチス「まあお聞きなさい。かの昔。そう……、多くの民が争っていた世界をどうしたら纏められるか……?その真実を追い求めた英雄の許に現れ、知識を授け、刃向かう者には牙を剥いた。」
アイリス「それ知ってる!白いドラゴンポケモンの伝説!」
ゲーチス「ほう、なかなかに博識な子供もいるものですね。」
アイリス「わたしこどもじゃないもん!」
ベル「アイリスちゃん。」
子供と言われじたばたするアイリスをベルがなだめる。なんだか姉妹みたいだ。しかしそれを傍目にゲーチスは話を続ける。
ゲーチス「英雄とポケモンのその姿その力が皆の心を纏めイッシュを創り上げたのです。そして今一度!英雄とポケモンをこのイッシュに甦らせ、人々の心を掴めば!意図も容易くワタクシの……いや、プラズマ団の望む世界に出来るのです!」
サナ「あのねえ!アンタらの目論見が分かったところで言わせてもらうけど、そんなことはもうどぉうでもいい!!」
ベル「サ、サナ!?」
サナ「だいたいアンタらの話はいっつも長い!それにね。」
一歩前に踏み出しゲーチスその他諸々に宣言する。
サナ「私たちは考え方も何もかもひとそれぞれでみんな違う。だけどね、みんなポケモンを大切にしてるの。それは同じ!みんな手にしたポケモンを大切に育てて一緒に暮らしてる。アンタたちが簡単に立ち入っていいものじゃないの!!だからつべこべ言わずにとっととベルのムンナを返しなさい!!」
アイリス「そういうことならわたしにも言わせて!」
サナ「アイリス?」
アイリス「わたしたち、初めて会った人とも仲良くなれる!それはね、ポケモンバトルをしたり交換したり、ポケモンのことで会話がはずんだりするから!みんなみんなポケモン大好きなんだもん!」
ゲーチス「フハハハ!なかなかどうして元気なお嬢さん方だ。……ワタクシは王のため、世界各国から知識を持つ人間を集め七賢人を名乗っている程です。今ここでの争いに利益はありません。おとなしく引き揚げましょう。では約束です!そこの娘。ポケモンは返しますよ。」
ゲーチスが合図をするとしたっぱのひとりがベルのムンナを放した。
ベル「ムンちゃん!」
ムンナ「むうぅうん!」
ベルに気付いたムンナがベルのもとへ飛び込んだ。
ベル「あっ、ありがとうございます!ムンちゃん、おかえり!」
アイリス「おねーちゃん!こいつらおねーちゃんの大事なポケモン盗った悪者なんだよ!?」
ベル「で、でもお。ムンナが無事で嬉しくて。」
ゲーチス「これはこれはうるわしい。ポケモンとひととの友情ですな。ですが、ポケモンを愚かな人間から自由にする。その伝説を再現し人の心を操りますよ。……では、ごきげんよう。」
サナ「待ちなさい!!」
立ち去ろうとしたプラズマ団を逃がすまいと入口を塞ぐが、次の瞬間フロアに白い煙が充満した。
サナ「くっ、また!」
博物館の時と同じだ。逃げられた!
.
.
.
アイリス「おねーちゃん!」
サナ「アイリス、どうだった?」
あの後また街の人たちに協力してもらって奴らを探したけど、今度は見つからなかった。
アイリス「全然ダメ。あーっ、もう!ホントあたまくる!」
ベル「あの、もういいよ。サナ、アイリスちやん。」
サナ「何言ってるの!アンタ悔しくないの!?」
アイリス「そうだよおねーちゃん!あいつら全然はんせーしてないもん!」
ベル「でもでも、ムンナは無事だったし、サナやアイリスちゃんは強いけど、もしあのままバトルになってたら危なかったと思う。みんなケガもなくてよかったよ!それにホラ、あたしなら大丈夫だよ!ふたりとも、ありがとう!」
そう言って握りこぶしを両わきにグッと構えた。この子の笑顔には、昔から適わないや。
サナ「う……。ま、まぁ、ベルがそういうなら。」
アイリス「えー?……う〜ん。あまり納得できないけど、分かった!それならそれで考えがあるよ!」
ベル「考え?」
アイリス「わたしがおねーちゃんを鍛えてあげる!」
ベル「え、えー!?」
アイリス「だぁいじょーぶ!わたしけっこー強いんだから!」
ベル「わっ、ちょっと、アイリスちゃん?サナ〜!」
行ってしまった……。なんか、善は急げ!な子だなぁ、アイリスって。
サナ「でも、ベルが許しても私は赦さないよ、プラズマ団。いつか必ず、アンタたちの野望もろとも打ち砕いてやる。」
ジム戦の後、ベルから連絡があり、噴水広場へと向かった。
ベル「おぅい、サナ!」
サナ「ベル、どうしたの?あれ、アイリスは?」
ベル「アイリスちゃんならもう少し街の中を見て廻るって。」
サナ「……。迷子にならなきゃいいけど。」
ベル「……だね。」
サナ「あ、でゴメン。用事って?」
ベル「うん。サナ!あたしとバトルしてほしいの!」
サナ「え、今?」
ベル「うん、今!アイリスちゃんに鍛えてもらったからね、あたしたちちょっとは強くなったと思うの!」
サナ「うん、分かった。いくよ!」
バトルを終えて、そこでしばらく今日一日の疲れを癒すことにした。
サナ「ミックスオレとサイコソーダどっちにする?」
ベル「あ、サイコソーダがいい。」
ベルに右手の缶を渡し、隣に腰かける。ソーダを一口飲み、
ベル「ふええ。やっぱサナにはかなわないか〜。」
と、ため息まじりにもらした。
サナ「ううん。ベルのポケモンたち、すごく強くなってたよ。」
それはお世辞でも励ましでもなく、本当にそう思ったことだった。
ベル「えへへ、そっかな。…………。サナ……。今日は、本当にありがとう。あのね、前に3番道路で女の子のポケモンをプラズマ団に盗られちゃった時、サナたちが取り戻してくれたことあったでしょ?」
サナ「うん。」
ベル「あの時と一緒。あたし、今度は自分のポケモンが盗られたのに何もできなかった。サナやアイリスちゃんの言う通り、すごく悔しかった。プラズマ団に、なんて人たち!って思った。でも、あたしはそれよりも、また助けてもらってるあたしが嫌だった。サナは頼っていいって言ってくれたけどそれじゃダメなの。だからゴメン。あたし、もっともっと強くなる!サナには勝てなくても、あたしはあたしのポケモンのためにがんばる!」
サナ「ベル……。」
そっか。ベルはもう、昔のままのベルじゃないんだ。旅に出て、この子だって成長して、強くなってるんだ。
サナ「分かった。でも、たまには頼ってほしいかな。私、ベルのためならどこにでも行くし、すぐに駆けつけるから。」
ベル「あはっ!何だか愛の告白みたいだね!」
サナ「なぁ!?」
ベル「冗談だよ!ありがとう、サナ!」
も、もうっ。急に何を言い出すんだろうこの子ってばまったくもう。
サナ「ところでさ、そのムンナ。」
ベル「うん。夢の跡地でねばりにねばってやっとゲットできたんだ。」
サナ「そっか、よかったね。」
ベル「うん!……、じゃあ、あたしそろそろ行くね。ポケモンの回復にポケモンセンターにも行かなきゃだし。ジュースありがとう。」
サナ「いいよ。それじゃあ、気をつけてね。」
ベル「ありがと、またね!」
駆けていくベルを手を振って見送った。その後ろ姿が見えなくなってからも私はしばらく振り続けた。
ダンサー1「WOW! 愛の告白みたい、か。」
ダンサー2「Oh〜、ミーにもそう聞こえたZE!」
ダンサー3「これは俺たち、ブラザーの恋路をサポートするしかないYO!」
サナ「アンタら〜!!何を勝手に盗み聞きしてんの!ってかだからブラザーはやめろ〜!!!」
ヒウンシティの高い空に、私の絶叫が響いた。ダンサーは私の顔が赤くなってるって言ってたけど、多分きっと、風邪でもひいたのだろうと、私は思う。
次回、ライモンシティ到着?
アーティの出番がついになくなりました。前回の予告はそんなアーティに対してのせめてもの償いでした。
や、一応いるにいるんですよ。ホラ、ゲーチスの第一声でビルに乗り込んだメンバーの中にアーティがいるってことは見て取れるでしょ?でも本編中での彼の科白即ち唯一のカッコイイ見せ場はサナとアイリスがおいしくいただきました。
そしてジム戦の模様はあっけなく割愛される始末です。南無い。
あ、因みに終盤の噴水広場でサナとベルがサイコソーダとミックスオレ飲むシーンでサイコソーダが缶になってるのはワザとです。(←実際は瓶)
さて、ヒウンシティから砂漠を越えると次はいよいよライモンシティです。が、デザートリゾートを西に行くかどうかどうしようと思っていましたが、まあ、後々行くことになるからインターリュード挟まずにライモンシティへ直行します。あとはアラララ博士とチェレンのイベントをどうするか、ですが、そこら辺は次回の更新をお楽しみに。
以上、サナレポートの数がARSの数を超えてしまったことに戸惑いを憶える秋雲でした。
【関連する記事】