「総集編」とはいうものの、全く新しいものに感じました。
さし当たって1話あたりを15〜20分に収めて、第8話までを130分にまとめてます。その中でも新たに挿入された科白などもあり、何度も観たひとでも見入ってしまいます。
もちろん作画の方も描き下ろされたカットも多く、その最たるものはなんといっても変身シーンでしょう。マミさんは第1話と第3話の分。さやかは第5話、杏子は第6話のカットがそれぞれ新規カットでした。テンション上がります。特に杏子!
マミさんの第3話の分は百合の花をモチーフに、さやかは人魚をイメージし、杏子は魅力度50倍増しに!
いやもう、杏子の変身シーン、マジでテンション上がる。かわいすぎるだろ。
それから、音楽も新曲が目白押し。数えてましたが、今回だけでも30曲近くあったかと思います。
テレビでは毎週放送するなかで、各話に同じ曲が繰り返し使われていますが、映画の場合は通しで2時間なので音楽の使い回しは基本的にしない場合が多く、今回の「前編」でもそうでした。
映画本編でのBGMはテレビ放送版とほぼ同じ選曲でしたが、一部でテレビ版と違う曲が使われる箇所もありました。
例えば第3話のマミが心境を吐露するシーン。テレビ版では[Sis puella magica!](いわゆる「勧誘のテーマ」)であったところが[Amicae carae meae](第6話でまどかが詢子にさやかのことで相談するシーの曲)に変わっていて、その第6話のシーンでは新曲が使われていたりと、そのようなケースがいくつもありました。そしてテレビ版では随所に用いられていた「勧誘のテーマ」もストリングスアレンジなど別のver. で使用されていたりと、とにかく何もかもが新鮮に感じられます。
それから、音楽面での一番の見所(聞き所?)は魔女の登場シーンですね。第1話でまどかとさやかがアントニーに襲われるシーンからシャルロッテやアンニャ(落書きの魔女の手下)のシーンまで総て新曲で表されてます。ただ、ゲルトルートは「Magia[quattro] ~Instrumental」、エルザマリアは「さやかのテーマ」のレクイエムアレンジと、他の魔女のような専用曲というような感じではありませんが、それでも名曲には違いありません。
そうそう。その魔女の曲といえば、最も印象に残ったのはやはりシャルロッテの曲です。まどかから「もう一人じゃない」と言われ
調子にのった自信を付けたマミさん。直後の変身シーンでは一番輝いた笑顔を見せ「もう何も恐くない」とテンションMAX。Kalafinaの新曲、「未来」(「マミさんのテーマ」をベースにしたヴォーカル曲)をバックに魔弾の舞踏を繰り広げ、「これで勝つる!!」と思いきや雰囲気はガラリと反転、不吉な歌(「♪ベーゼベーゼ」というような女声コーラス[*])と共にシャルロッテが登場します。フラグ回避かと思いきやそんなことはあり得なかった。それどころか、マミられたあとにソウルジェムが砕ける描写が挿入され、彼女の死は確定します。
ていうか、このシャルロッテの一連のシーンはすごくよかった。もちろん、マミさんは死んでしまうショッキングなシーンではあるのだが、それに至る動きに緊張感が増しているに加え、スピード感も上がっている。そこにあの梶浦さんの曲が来るのだから、これを一押ししないわけにはいかない。
[*]今回の劇伴に於いて、歌詞はいつものスキャット以外に、ドイツ語に訳され歌われている箇所があるようで、ここのシャルロッテの曲もおそらくドイツ語と思われます。聞き取れた「ベーゼ」という単語、ドイツ語では「悪」という意味。この世界の魔女は絶望をまき散らす、魔法少女にとって悪たる存在。それ以下の歌詞はうまく聞き取れませんでしたが、「ベーゼ」は幾度も繰り返し歌われています。
一方お隣の国では「ベーゼ」は「接吻」の意で、なんとも皮肉めいた言葉です。(もちろんスペルは違いますが。)
ところでこの時のマミさんて
これに通じるものがあるよね。
閑話休題。他の面では、背景の美術がより綿密に作り込まれていたり、SEの効果がより強調されたシーンが多かったりと。まあ、変更点を上げていったら実にキリがないのですが、一番大きな変更点は、初見に於けるほむらへの印象を変える効果がなされている点でしょう。
たぶん、テレビ版を第1話から観てるとおおよそまどかやさやかの視点で観測するので「ほむら=悪役」という印象も生まれてしまいそうなんですが、例えば第6話Aパート終盤、杏子との交戦現場でさやかが「あの転校生もグリーフシード目当てでマミさんを見殺しにしたんだ!」という科白のある一連のシーンはオミットされています。実際ほむらがマミの魔法によって拘束されていたことは視聴者も知っているので完全な悪とは見なされないものの、観る人によってはマイナス方向にいく可能性も否めない。それを無くしたということは、ほむらへの印象は悪い方へは持って行かせたくない、そんな意図を感じました。
それから第8話のAパート終わり、さやかとほむらが対峙するシーンもオミットされています。ここではほむらがまどかに対する思いをここまでの段階では一番目立って見せるシーンですが、ひょっとしたら後編まで、ほむらの目的はあまり示唆しないようにする目的もあるのかもしれません。その後の公園でキュゥべえを蜂の巣にした直後のまどかに迫るシーンでも、テレビ版で「まどかぁ!」と最後に叫んだところは「待って!」にとどまり、その後泣き崩れて声細に「まどかっ…。」という風に変わっていました。
とは云っても、公式の出してる予告映像ではそこら辺のネタバレ全開なんですけどね。
SEは重低音利いてました。ラストシーンであるさやかの魔女化シーンは一番の迫力。
それから序盤。こっちは重低音ではないですが、まどかとほむらが保健室へ向かうシーンではまどかの「あの、暁美さん?」からのほむらの表情が3度アップになるカットで靴音も強調される処理になっていて、ほむらの視点で読み取れるようになっていました。
あとほむらといって忘れてはならないのはオープニングです。泣けます。まどかが生まれてから両親に育てられ、学校入学、さやかや仁美との出会い、タツヤの誕生、と彼女の成長録が流れるのですが、最終話の結末…特に河原での詢子を思い出すともう……。
あと、とても「まどほむ」でした。狼魔クンが萌え死ぬんじゃないかってくらい。初っ端からやってくれました。ほんとうにありがとう、SHAFTさん。
とにかく新しい発見がいくつも味わえて、それを更に拡げていける、そんな良い総集編でした。
入場特典の色紙ももらえたし、パンフとクリアファイルも買えたし、本当におなか一杯です。3個買ったイヤホンジャックは1個はさやかで残り2個はキュゥべえだったので、1個妹にあげました。